探偵のエクリチュール

「探偵……探偵か。人間であると同時に、善を背負わなければならないもの。故に、純粋な悪意には弱い。純度百パーセントの悪意は、端から奴の想定外だ。理由なく、分別なく、子供のように無邪気な悪意に探偵は滅法弱い。そうだ、そうだともシャーロック・ホームズ。キミは、自分が自分であるために、カルデアで事件を起こすことを容認するという、あまりに非探偵的で、純人間的な選択をしたことに気づかないだろう。嗚呼、愉快だ。キミはもはや探偵ではなく、ただの人間だ。そう、私と同じただの人間だとも。さて、同類(ホームズ)のために事件を考えなくてはな」
 カルデアの片隅で、そんな独り言と共に金属光沢を伴う青い羽をもった蝶が、ふわりと飛んでいた。

「探偵のエクリチュール」・了

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