MODELING AND SIMULATIONS OF a DETECTIVE BEHAVIOR SEMIOSIS BASED ON PROTOCOL ANALYSIS

9.

 英霊シャーロック・ホームズはとても大切にしていた「緋色の研究」の初版をテーブルに置き、じっとその表紙を眺めていた。いつものように中身を読むことはしていない。ただ、その表紙を眺めていた。
「これは、『私』には必要だったのかもしれないが、『英霊シャーロック・ホームズ(わたし)』には必要のないものだ」
 彼は世界の成り立ちから禁忌の領域まで語ることのできる声で呟いた。口にすることで、真実を定義するように。
「もはや、手元に置いておく必要もない……そうだ、マスターに渡すのがいいだろう。マスターならば大切に読むはずだ」
 何かの機会に、渡すとしよう。
 ホームズは丁寧に読まれ傷の少ない「緋色の研究」を黒い手袋をした指先で慈しむように撫でると、一番上の引き出しを開けて、そこに本を置いた。

 数日前にできた二カ所のしみは、すっかり乾いて、跡すら残っていなかった。

MODELING AND SIMULATIONS OF a DETECTIVE BEHAVIOR SEMIOSIS BASED ON PROTOCOL ANALYSIS・了

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